デジタル自助具制作研修プログラム

目的
一人ひとりに寄り添う道具づくりを通して、利用者の満足度を高め、より質の高いケアを提供する方法を学ぶ
対象
- 介護・福祉の現場で働く方
- 利用者に寄り添ったケアを目指す方
- 自助具の活用や制作に興味がある方
- 現場の課題を解決したいと考えている方
内容
初級コース
目標
3Dプリンターをすぐに使えるようになること
できること
3Dプリンターの使い方を一から学び、簡単な自助具を3Dプリンターで出力できるようになります。
どれくらい簡単か
パソコンやタブレットが使える人なら誰でもできます。
特別な知識がなくても、基本操作を覚えるだけですぐに作り始められます。
具体的な内容
- 3Dプリンターの仕組みと基本的な操作方法
- ダウンロードしたファイルの出力方法
- 初心者向けのお手軽モデリング(シンプルな形状をデザイン)
- 出力時の注意点や材料の選び方
実習&演習
- 実際に3Dプリンターで出力して試作を体験
- 簡単な道具(例: ストローホルダーなど)のモデリング
期待される成果
- 3Dプリンターの基本操作を習得し、自分で試作を行えるようになる
- 簡単なモデリングから出力までの流れを理解する
中級コース
テーマ
- 介護・福祉現場で役立つ道具をつくる力を身につける
できること
介護や福祉の現場で役立つ特別な道具を作ります。たとえば、柔らかい素材を使って安全で便利な補助道具を作れるようになります。
どれくらい簡単か
公開されているデータを元にアレンジを加えていくので、初めてでも安心です。
少しずつ自分の現場にあわせたデザインを作れるようになります。
具体的な内容
- 利用者のニーズに応じたデータ調整方法
- 公開データを利用した効率的なデザインの手順
- やわらかい素材を使った道具の工夫
- 利用者からの反応をもとに改善していく方法
実習&演習
- 柔らかい素材(例: TPUフィラメント)を使った実用的な自助具の設計・出力
- 利用者を想定したデザインの調整や改良演習
期待される成果
- 介護・福祉現場で現場の職員が必要な道具を設計・試作できる
- チームや利用者と反応を見ながら道具を改善していくプロセスを理解する
その他、ご希望に応じて研修に盛り込む内容を調整します。
スケジュール
ご希望のスケジュールをお伺いし、調整いたします。
場所
ご希望の場所に3Dプリンターと材料を持参し、実際の手順をレクチャーします
費用
19,800円/回(税込)
交通費・材料費込み
定員
ご用意いただいた会場に入る範囲であれば何名でもOKです
講師情報

鈴谷瑞樹
3Dプリンターやレーザーカッターを活用し、デジタルものづくりを全国各地で支援。
ワークショップやセミナーを積極的に開催。福岡市科学館で講師としても活動中。
現在、特定非営利活動法人AIPにてAIPCafe&舞鶴図工室担当。
申し込み方法
以下のボタンからフォームを開き、連絡先をご記入ください。
担当スタッフよりご連絡いたします。
こんなことが可能か?など、追加で説明を聞きたい場合もお気軽にご連絡ください。
必要なもの
- PC (Windows or MacOS)
- インターネット回線(WiFi)※もし会場に無い場合はご相談ください
キャンセルポリシー
日程変更について
- 参加者都合ご都合が悪くなった場合、前日までにご連絡いただければ、日程を何度でも変更可能です。変更に伴う追加料金は発生しません。
- 主催者都合主催者側の都合により日程が変更となる場合、速やかにご連絡いたします。代替日程をご案内のうえ、日程が合わない場合は受講料の請求を行いません。
キャンセルについて
- 参加者都合前日までにキャンセルのご連絡をいただければ、受講料の請求は行いません。
- 当日のキャンセル当日のキャンセルや無断欠席の場合は、受講料全額を請求させていただきます。
主催者による中止について
万が一、主催者側の都合によりプログラムが中止となる場合は、速やかにご連絡いたします。受講料は一切発生いたしません。また、次回の優先予約をご案内いたします。
連絡先
日程変更・キャンセルのご連絡はメールでお知らせください。
自助具 x 3Dプリンターについてのコラム
自助具とは
自助具とは、介護やリハビリ、日常生活を支えるために作られた、特定の機能を持つ道具のことです。主に身体的な障害や高齢に伴う動作の制限を補助し、利用者ができる限り自立して生活できるようサポートする役割を果たします。例えば、握力が弱い方でも簡単に持てるスプーンや、着脱しやすい衣服の補助器具などがその一例です。
自助具における課題
介護やリハビリの現場では、自助具の重要性が年々高まっています。しかし、多くの現場から
「市販品では利用者に合わない」
「必要なものが高額すぎる」
という声が聞かれます。例えば、手の握力が弱い方のための食器用グリップや、リハビリ用のトレーニング器具など、既製品ではサイズや形状が合わない場合も多く、利用者が不便を感じることがあります。
「もっと使いやすいものを」
「一人ひとりに合った形状が欲しい」
―こうした切実なニーズに対し、従来の製品では応えきれないことが課題となっています。
3Dプリンターの可能性
そんな課題を解決する技術として注目されているのが「3Dプリンター」です。3Dプリンターは、従来であれば専門工場での高額な製造が必要だったオーダーメイド品を、低コストかつ短時間で製作可能にしました。
例えば、利用者の手の形にぴったりフィットするカトラリーグリップや、特定のリハビリ動作を補助する器具など、3Dプリンターなら個々のニーズに合わせた製品をその場で作り上げることができます。
さらに、現場での声を反映した迅速な試作・改良ができるため、利用者と介護者の間で理想の自助具を一緒に作り上げることが可能です。
3Dプリンターは、福祉や介護の分野において「必要なものを、必要な形で提供する」という新しい可能性を切り開いています。
「3Dプリンター × 自助具」の例
3Dプリンターは、利用者のニーズに応じた多様な自助具を手軽に製作できるツールです。
- カトラリーホルダー T型S

握力が弱かったり、手指の細やかな動きの調整が難しい方でも、スプーンやフォークなどを使いやすくするための道具。前腕中間位(ピストルを構えるような位置)で使用することができます。
3Dプリンターでは、手の形状や力の入り方に合わせたグリップを作成できます。形状や厚みを自由に調整できるため、一人ひとりのニーズに最適化できます。
- 残存する手指の機能を活かした拡張スイッチ

脊髄性筋萎縮症でキーバインド操作が難しい方のために、左環指(薬指)でShiftキーを操作できる装置を製作し、痛みを防ぐカバーも追加。これにより、Illustratorの操作性が向上し、就労支援事業所での仕事の幅が広がりました。
- 歩行器用アームサポート

歩行器用アームサポートは、U字型歩行器で前腕の滑り落ちを防ぐ道具で、上からはめ込む形で取り付けます。サイズが合わない場合は滑り止めシートを挟むか、モデルを調整して対応します。
福祉現場へのメリット
現場の声を形に:迅速な改良のサイクル
3Dプリンターの大きな利点は、利用者や介護者からのフィードバックをすぐに反映し、製品を改良できる点です。たとえば、初めに作ったカトラリーグリップが「少し大きすぎる」と言われた場合、デザインを調整し、すぐに新しいバージョンを出力することができます。この柔軟性が、既製品では難しい「本当に使いやすいもの」を作る力となります。
3Dプリンターを活用することで、従来では対応しきれなかった利用者一人ひとりのニーズに応えることができます。身体の機能に応じたオーダーメイドの自助具を提供することで、生活の質が大幅に向上します。適切な自助具を使用することで、利用者が日常生活の中でより自立できる環境を実現することが可能です。
低コストかつ迅速な対応
3Dプリンターは短時間で設計から製作までを行えるため、いままでは高価で時間がかかっていた特注品をスピーディーに提供できます。市販品では対応が難しいニーズにも柔軟に応えられ、現場での課題解決力が大きく向上します。コスト面でも従来の製造方法に比べて負担が少ないため、福祉現場の予算内で対応しやすいのも大きな利点です。
ものづくりを通じた認識の共有
3Dプリンターを使った自助具づくりによって、利用者自身やその家族、介護者が一緒に参加できる体験型の改善プロセスが生まれます。この共同作業を通じて、利用者と支援者の間で日常生活の改善についてのコミュニケーションが生まれることがあります。また、「自分が使うものを自分たちで作る」というプロセスそのものが、利用者にとっては達成感や自己肯定感を高める貴重な機会にもなります。
プラットフォーム「COCRE HUB」
COCRE HUB (コクリハブ)は、大量生産を基本とする経済では叶えることが難しい社会のありたい姿を、デジタルを活用し、ユーザーもつくり手も「ともにつくり叶える」ためのプラットフォームです。その名称は、「ともにつくる=Co-Creationのハブ=接続点」に由来します。
2023年秋,3D プリンタで自助具をつくる方々の共創プラットフォームとして一般社団法人 ICT リハビリテーション研究会を中心に設立されました。
自助具などの3Dプリントファイルの共有、パラメトリック (寸法調整) サービス、コラボレータマップによる身近な協力者の検索機能を備えています。その他、3D プリンタの活用を始めたい・伝えたい方々に便利な学習コンテンツや、導入・作成事例の共有をしています。
「地域全体でつくる福祉」を目指して
私たちは、「すべての人が、ものづくりを通じて支え合える地域社会」を目指しています。
地域社会の重要な部分を占める福祉現場での課題に対し、単なる解決策を提供するだけでなく、地域全体で創造的に取り組むことで、利用者やその家族、支援者が笑顔で過ごせる未来を築いていきたいと考えています。
3Dプリンターをはじめとするデジタルものづくり技術は、特定のプロフェッショナルだけが使うものではありません。日常の細かい課題に直接接しており、利用者のことを最もよく理解している場所にいる方が気軽に使いこなせる環境を整えることで、地域社会をものづくりを通じて支えていけると信じています。
メッセージ
3Dプリンターで作る自助具には、可能性が無限に広がっています。「こんなものが欲しい」という思いを形にし、利用者一人ひとりに寄り添ったものづくりを一緒に始めてみませんか?ものづくりが初めての方も大歓迎です。専門スタッフがサポートしますので、安心してご参加ください。
未来の福祉を、みなさんの手で少しずつ幸せにしていきましょう!