3Dプリンタでつくる生活自助具ワークショップ 第3回講座開催レポート

3Dプリンタでつくる生活自助具ワークショップの第3回を実施しました。当日の様子をお伝えします。
第3回「自分に合う自助具の選び方とサイズ調整」
2026年9月27日 10:00-15:00 於:なみきスクエア2F (福岡市東区 千早駅最寄り)
今回の参加者は4名で、うち1名は初めてのご参加でした。
前回に引き続き、介護業界の方を中心にご参加いただきました。 初めてご参加の方にもスタッフによるサポートがあり、モデリング用の3DCAD(TinkerCAD)、および3Dプリンター操作アプリケーション Bambu Studio の操作方法をフォローしました。
午前の部:筆記補助具の作成とサイズ調整
今回は、身近な事例から暮らしの動作の中の困り事を解決する、というテーマで、「書く動作」を念頭に筆記補助具の作成をレクチャーしました。

午前の部では、講師が用意した鉛筆用の補助具原型をもとに、実際の筆記具の太さに合わせて、データ上の穴の大きさをどう決めるかを扱いました。 ノギスと鉛筆をお配りし、各自の手元で計測していただき、その値をもとにTinkerCAD上で内径を調整しました。


内寸を比べるためのテストピースも使用し、穴の直径を0.5mm刻みで比較できる治具を作製しました。これは、工業分野で一般的な考え方をお伝えする内容でもあります。 公開データの寸法が実物と合わないことも少なくありません。そこで、そのような場合にどう補正するか、というお話にもつなげました。
想定と共有の重要性
自助具は、誰が、どの場面で、どのような困り事に対して使うのかを想定して作るものです。この点は、参加者のみなさんにはすでに共有されている認識かと存じます。 加えて、作ったものを他の人に共有すると、日常生活の中で意見交換が生まれやすくなる、というお話もしました。 筆記用具といっても、近年は鉛筆やボールペンに加え、タブレット向けのスタイラスペンなど、使われる場面が広がっています。こうした場面でも、自助具を導入する余地があります。
3DCADの操作について
CAD全般に通じる知識として、次の点をお伝えしました。
- 透明色を使うと、オブジェクト同士が重なる様子を確認しやすくなります。
- グリッドに合わせる(スナップ)機能を使うと、穴の位置を簡単に揃えられます。
あわせて、STLファイルについても説明しました。
CocreHubの紹介
前回に引き続き、CocreHubについて説明しました。
3Dプリント自助具データ共有プラットフォーム
オープンプラットフォームの利点として、自分が作ったものを公開して他の方に使っていただけること、
そして、他の方が作ったデータを活用事例とあわせて自分でも利用できることをあらためてお伝えしました。 具体例として、さまざまな筆記補助具の公開データをじっくり見比べる時間を設けました。
印刷とスライサーの解説
今回の自助具の出力時間は、およそ35分でした。 11:20ごろには、サンプルデータを使い、Bambu Studioのスライス機能で内部構造(インフィル)について解説しました。 その後は印刷を進めながら、昼休憩に入りました。

午前の部でいただいた質問とそのお答え
Q.鉛筆を挿入する穴部分の直径は最終的にどのように決めるとよいか
A.ノギスで測って穴の大きさを決定しても、3Dプリンターの出力の都合、0.1mm程度の誤差は出やすいため、測ったサイズより少し大きい、あるいは小さい穴をいくつか並べて試すのがコツです。なお、外径については握る人の手の力に合わせて「手から滑り落ちない程度に留まるサイズ」を選びましょう。
- 画面上でオブジェクトの位置を細かく調整するには?
- 穴を構成する部品を透明色に設定すると重ね合わせが見やすくなります。また、TinkerCADにある、「スナップ」機能の単位を0.1mmに変えて、キーボードの矢印キーでオブジェクトを動かすとより合わせやすくなります。

午後の部:改良とご相談
午後は、複数回のテスト出力を通して、握りの径が適切か、もっと持ちやすい形にできないか、といった改良に取り組みました。 3Dモデリングは難しいという印象を持たれがちですが、TinkerCADでは単純な形状の組み合わせだけで、多くの工夫や、実用に耐える精度の造形ができます。その点が参加者のみなさんに伝わったのではないかと思います。


参加者の方それぞれに作りたいものがあり、8月末が締め切りだった「3Dプリント自助具デザインコンテスト 2026」に応募した作品をお持ちの方もいました。職場にモデリングを導入したい、というご相談も活発に寄せられました。
技術の応用としては、積層造形で強度を確保するための工夫や、既製品と接合する事例などを紹介しました。
午後の部でいただいた質問とそのお答え
- 頑丈にするためには「中身」を詰めた方がよいか?(3Dプリント時の設定 : 充填率 についてのご質問)
- 中身をぎっしり詰めるよりも、「外側の壁の厚み = 積層ピッチ」を増やす方が材料を節約しながら簡単に頑丈にできます。
- ころがりを防いだり、持ちやすくするコツは?
- 丸いパーツの一部を平らに削ったり、表面に小さな突起をつけると転がり防止や指の引っ掛かりになります。肌に刺さりそうな角がある場合は、「ベベル」機能を使うと丸めることができます。

- ねじ止めパーツを利用したい時はどうするとよいか?
- プラスチックに直接ねじ止めすると、ねじ穴が傷みやすくなります。はんだごてでインサートナットを熱して埋め込むと、しっかり固定できます。
[参考]
インサートナットの種類と特長 【通販モノタロウ】
「3Dプリンタでつくる生活自助具ワークショップ(全6回)」 、次回の日程は 10月18日(日)です。
公開データなどを活用して、よりオーダーメイドに近づけていく「カスタマイズ」の工程をお伝えします。